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アメリカの新聞にみる 人権問題とNPO
2001年5月号

今月の論評: 人種分離、都市の盛衰‐‐人口問題のいま

かしわぎ・ひろし

特集:人口統計結果にみる米国社会の光と影

1. 北加もヒスパニック系が急増
"Northern California Joins Hispanic Boom" Monday, April 2, 2001, San Francisco Chronicle

2. アジア系の文化、ベイエリアで発展
"Asian Culture Is Booming In Bay Area" Monday, April 9, 2001, San Francisco Chronicle

3. 人口統計の勝者と敗者、現実はどうか?
"Census Gainers & Losers: What Now?" Wednesday, April 11, 2001, Wall Street Journal

4. 多様化の進展の一方、人種分離も存続
"Segregation Amid Growing Diversity" Thursday, April 12, 2001, Asian Week

5. 大都市で白人が少数派に、新たな課題に直面
"Whites in Minority in largest Cities, the Census Shows" Monday, April 30, 2001, New York Times

ニュース・ファイル

1. 加大学へのマイノリティの入学、97年レベルに
"UC Minority Admissions Rebound, But Berkeley Lags" Wednesday, April 4, 2001, San Francisco Chronicle

2. アパレルメーカー、労働条件監視団体と連携
"Apparel Makers Back New Labor Inspection Group" Tuesday, April 10, 2001, Wall Street Journal

3. 2日間の騒乱後、平静を呼びかけ
"Appeals for Peace in Ohio After Two Days oi Protests" Thursday, April 12, 2001, New York Times

4. リトルリーグの支部長、性差別の訴え、
"Little League Is at Center Of a Claim Of Sexism" Saturday, April 14, 2001, New York Times

5. 看護施設の管理不備、州が立入調査報告
"Nursing Homes Found Lacking" Tuesday, April 17, 2001, San Francisco Chronicle

6. 保守的な法律団体、ブッシュ政権下で影響拡大
"A Conservative Legal Group Thrives in Bush's Washington" Wednesday, April 18, 2001, New York Times

7. 人種に基づく選挙区の策定は合憲、最高裁
"High Court Allows Race in Redistricting" Thursday, April 19, 2001, Wall Street Journal

8. 加州上院、日本人町の保存法案審議開始
"State Senate Bill Introduced To Help Preserve Historic Japantowns" Saturday, April 21, 2001, Nichibei Times

9. 宗教団体の社会活動の効果、データは不十分
"Church-Based Projects Lack Data on Results" Thursday, April 24, 2001, New York Times

10. NPOが営利会社を設立し、財源不足カバー
"Meals on Wheels Tries For-Profit Tactics to Grow" Wednesday, April 25, 2001, Wall Street Journal

今月の論評: 人種分離、都市の盛衰‐‐人口問題のいま

かしわぎ・ひろし

2000年の人口統計調査の詳しいデータが徐々に公表され、これらを分析した調査結果 も発表され始めた。過去10年間に、ア メリカでは、人種的多様性の進んでいる姿が明確になってきた。反面 、居住地における人種分離傾向が持続したり、人口の急増 や急減の問題が深刻になるなど、人口問題が依然として解決されずにいる実態も示されている。これらの問題について、考えて みたい。  

人種的多様性の進展は、白人の減少とマイノリティの増加によってもたらされた。1990年には白人人口が全体の75%を占め たが、2000年には69.1%に減少。一方、ヒスパニック系は、9.3%から12.5%、アジア太平洋系は2.8%から3.6%へと増加し た。なお、黒人とアメリカ・インディアンの人口比は、過去10年間で、変化していない。  

地域別に見ると、人種的な多様性は、より顕著なところが少なくない。大都市は、そのひとつだ。例えば、全米の大都市100 のうち、白人の人口は、71都市で減少。また、白人が多数を占めていた都市の数は1990年の70から、2000年には52に減少し た。中小の都市に目を向けると、アジア系が過半数の人口を占めるところも現われている。  

人種的な多様性の進展は、人種融合をもたらすと考えるのが普通かもしれない。だが、人種の分離傾向は、依然深刻な状況に ある。1920年代に南部の農村地域から北部の都市に、大規模な黒人の移動があった。彼らの子孫の多くはいまも、ニューヨーク からシカゴ、ミルウォーキーにつながる人口密集地域で生活している。低所得者が多いことから、「ゲット・ベルト」と呼ばれ ているところだ。  

一口に大都市といっても、中心街と郊外では、社会的にも経済的にも大きく異なる。大都市圏にあって、白人の70%以上は郊 外で生活。黒人の郊外生活者が40%にすぎないのと比べると、大きな違いだ。ヒスパニック系も半数は、郊外に住むようになっ てきた。しかし、ヒスパニック系が住む郊外地区に白人の居住者は、1990年に比べ減少した。  

大都市圏に住む最も典型的な白人の周囲をみると、白人が83%と圧倒的多数で、黒人は7%にすぎない。反面 、典型的な黒人 の場合、周辺の居住者の54%は黒人で、白人は33%に止まっている。こうした居住地における人種分離傾向は、経済成長が鈍い 北部で、特に顕著だ。一方、成長が著しい南部や西部では、居住地での人種融合が進んでいる。  

人口問題のひとつに、都市部における人口の急増や大幅な減少といった事態がある。オハイオ州とウエストバージニア州にま たがるステウベンビル・ウェイアートン地区は、都市部として全米で最も人口が減少した地域だ。10年間に人口は7.4%減少。 ニューヨーク州のユティカ・ローマ地区やビンガムトンは、4‐5%人口が減った。  

一方、人口の急増に頭を悩ましている都市もある。ギャンブルの街、ラスベガスは、ホテルやカジノ建設のラッシュにより、 過去10年間に人口がほぼ倍増、2000年には156万人となった。アリゾナ州のユマやテキサス州オースティンでも、50%に近い 人口増が生じた。  

都市における、人口の減少は、メーカーなどの基幹産業の撤退によるもの多い。こられの地域では、経済だけでなく、社会的 にも大きな問題が発生していると想像できよう。一方、急激な都市の膨張は、大気汚染の深刻化やインフラ整備の遅れといった 問題を生み出している。地域別にみると、南部と西部が成長、北東部と中西部が低迷しており、地域間の不均衡な発展も今後議 論になろう。
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