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アメリカの新聞にみる 人権問題とNPO
2001年6月号

今月の論評: セクシュアリティと人権問題

かしわぎ・ひろし

特集:性的志向をめぐり新たな動き

1. 性転換医療に保険適用、SFが市職員に
“SF to finance staff sex-change”
Tuesday, May 1, 2001, San Francisco Chronicle

2. 性的志向の変更の可能性で異なる調査報告
“Split decision on sexual reorientation”
Wednesday, May 9, 2001, San Francisco Chronicle

3. 一夫多妻主義者の裁判、ユタ州でスタート
“Trial Opens in Rare Case of a Utahan Charged With Polygamy”
Tuesday, May 15, 2001, New York Times

4. 父子家庭、1990年代に62%増加
“Single-father households in USA increased 62% in ‘90s”
Friday, May 18, 2001, USA Today

5. 卒業パーティのキングにレスビアン、町は衝撃
“Lesbian’s election as prom king rocks town”
Monday, May 21, 2001, San Francisco Chronicle


ニュース・ファイル

1. 日本史の教科書問題で抗議デモ、SFで実施
"Protest Over Jpn. History Textbooks Held in SF"
Tuesday, May 1, 2001, Hokubei Mainichi

2. 下院委員会、中絶問題の大統領行政命令に反旗
"House Panel Blocks Order Linking Money to Abortion"
Thursday, May 3, 2001, New York Times

3. 妊娠した女性従業員への法的保護、依然不十分
"Pregnant Pause: Advocates say laws don't go far enough to protect expectant workers"
Saturday, May 13, 2001, San Francisco Chronicle

4. 人口統計局、アジア系の民族別人口を発表
"Census Releases Date on Asian Subgroups"
Thursday, May 17, 2001, Asian Week

5. 加大、積極的差別是正措置の禁止政策を撤廃
"Regents rescind affirmative action ban"
Friday, May 18, 2001, Berkeley Voice

6. 大統領、慈善の選択の資金を企業に期待
"Bush Turns to Corporations to Help Fund Faith-Based Plan"
Thursday, May 24, 2001, Wall Street Journal

7. 黒人蔑視の広告でトヨタが謝罪
"Toyota Apologizes to African Americans Over Controversial Ad."
Friday, May 25, 2001, Nichi Bei Times

8. インディアン、大草原地帯を再生
"Indians reclaiming the Great Plains"
Sunday, May 27, 2001, San Francisco Chronicle

9. 「パール・ハーバー」に日系人らが不快感
"Some Upset by Twist on Pearl Harbor"
Monday, May 28, 2001, New York Times

10. 障害者のゴルファーはカート使用可能、最高裁
"Disabled Golfer May Use a Cart On the PGA Tour, Justices Affirm"
Wednesday, May 30, 2001, New York Times


今月の論評: セクシュアリティと人権問題

かしわぎ・ひろし

 セクシュアル・オリエンテーション。
 個々人の性に関する志向を示す概念である。この概念は、異性愛が「ノーマル」であるという通念に対して、同性愛が「アブノーマル」ではないことを示そうという意図が存在する。
 同様のことばに、セクシュアル・ステレオタイプといういい方がある。男性や女性の属性や役割をステレオタイプ化することを意味している。男性は外で働き、女性は家で家事を行う、というような考え方だ。
 セクシュアル・オリエンテーションやセクシュアル・ステレオタイプは、セクシュアリティに関連した問題である。こうした問題は、公然と語られることが少なかった。いわゆる「下ネタ」的なイメージがともなうことも、その理由のひとつだろう。
 だが、20世紀最後の四半世紀において、セクシュアリティの問題は、極めて大きな人権問題のひとつとして理解されるようになった。セクシュアリティと人権がどう関連するのか。今回は、この点について考えてみたい。

 セクシュアル・オリエンテーションの問題が大きな関心を集めたのは、エイズとの関係においてである。今から20年前、エイズが発見され、同性愛者に多い「奇病」といわれた。エイズに感染した同性愛者たちは、自らの生命を守り、エイズと同性愛への偏見を除くため、闘い始めたのである。
 今日、エイズと同性愛には、医学的な関係がないことが明らかになっている。しかし、宗教的な理由などもあって、同性愛を容認しない状況は社会的に広く存在する。また、同性愛者を敵視し、暴力事件が引き起こされることも少なくない。いわゆる、ヘイト・クライム(憎悪犯罪)である。
 さらに、同性愛を「神への罪」とみなし、異性愛への変更を迫る動きも無視できない。最近では、保守的なキリスト教のグループがこうした動きを推進。これに対して、同性愛者は、異性愛への変更の強要が同性愛者に多大な苦痛を強いるなどの理由で強く反対している。
 同性愛との関連で、関心を集めていることのひとつに、トレンスジェンダーがある。性転換者だけを意味することもあるが、女装する男性や、ホルモン剤などの投与で女性的になろうとする男性や男性的になろうとする女性なども含まれる。
 セクシュアリティに寛大な都市といわれるサンフランシスコでは、人口80万人のうちトランスジェンダーが1万数千人にのぼるといわれている。最近、市では、市の職員が性転換手術を受ける場合、医療保険を適用できる措置を決定、全米的な注目を集めた。
 セクシュアル・ステレオタイプも大きく崩れてきている。2000年の人口統計で、全米の父子家庭の数は、1990年には135万4540世帯だったが、2000年には、219万989世帯に増えたのは、その一例だ。これは、62%の増加率で、母子家庭の増加率の2倍に達している。
 セクシュアリティの問題で自由度を高めると、家庭という概念が崩壊するという考えがある。これは事実かもしれないが、「従来の」ということばを加える必要がある。従来の家庭の概念が正しいかどうか別として、異なった形の選択権を否定することは、同性愛者や父子家庭への差別を助長してしまう。
 従来の家庭の概念は、一夫一婦制だ。これに対して、一夫多妻主義者が裁判にかけられる事態が生じた。かつて一夫多妻制を認めていたモルモン教の信者が多い、ユタ州でのことだ。これも広い意味で、セクシュアリティがからんでいる。今後、こうした問題にも目を向けていきたい。

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