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アメリカの新聞にみる 人権問題とNPO
1999年6月号

今月の論評: アメリカ企業とマイノリティ、女性問題

まつい・かなえ

特集:企業と人権をめぐるさまざまな動き

1. コダック社、マイノリティ従業員に給与補償
"Kodak Agrees to Pay About $13 Million In Raises to Female, Minority Workers" Tuesday, May 4, 1999, Wall Street Journal

2. 初の女性重役会議が開催される
"A Power Confab For Exclusive Businesswomen" Monday, May 10, 1999, Wall Street Journal

3. ク大統領、低所得者地域の投資促進のため視察
"Clinton Tries to Sell Executives on Inner-City Economics" Wednesday, May 12, 1999, New York Times

4. シアーズ、児童労働法違反で罰金32万ドル
"Sears Is Fined $325,000 by US For Violating Child-Labor Laws" Saturday, May 15, 1999, New York Times

5. おもちゃ会社の和解金が、子どものおもちゃへ
"Needy Children Will Get Toys In Antitrust Suit Settlement" Wednesday, May 26, 1999, San Francisco Chronicle

6. コカコーラ社の多様化の必要性、95年に指摘
"Coke Was Told In '95 of Need For Diversity" Thursday, May 28, 1999, Wall Street Journal

ニュース・ファイル

1. 高齢者虐待への対策、カ州で本格化
“New Programs Set to Stem Tide Of Elder Abuse” Monday, May 3, 1999, San Francisco Chronicle

2. 少数民族研究学科の閉鎖問題で逮捕者100人
“More than 100 Arrested in Ethnic Studies Protest” Thursday, May, 6, 1999, Asian Week

3. 学校当局、風変わりな生徒を詮索
“Schools Scrutinizing Gothlike Kids” Monday, May 10, 1999, San Francisco Chronicle

4. 銃規制用要求団体、MADDをモデルに
“Gun Control Group Modeled After MADD” Monday, May 17, 1999, San Francisco Chronicle

5. ナチス収容所職員の市民権剥奪、裁判を再開
"Nazi Death Camp Case Reopened by US" Thursday, May 20, 1999, New York Times

6. 若者の会議、さまざまな問題を議論
"Youths tackle tough topics at conference" Sunday, May 23, 1999, San Francisco Examiner

7. 教育現場のセクハラで学校に責任、最高裁判決
"Justices Say Schools Liable in Sex Harassment Cases" Tuesday, May 25, 1999, Wall Street Journal

8. 警察官による射殺事件への抗議の声高まる
"Protests Over Police Killings Grow" Wednesday, May 26, 1999, Los Angeles Times

9. 赤ちゃん売買斡旋業者、親近感示し顧客に接触
"Women Accused of Selling Babies Lured Clients With Friendly Approach" Monday, May 31, 1999, New York Times

今月の論評: アメリカの企業とマイノリティ、女性問題

まつい・かなえ  

アメリカは、「人種のるつぼ」といわれるように、様々な人種の人々が生活している。しかし、現実は「人種の サラダボール」である。異なる人種や文化は、溶け合うことなく、それぞれ存在しているからだ。本来、人種や文 化に優劣はないはずだ。しかし、力を持つもの、持たないものに分かれ、マイノリティや女性に差別 が残っている のが、今日のアメリカの現実である。  

とはいえ、今日のアメリカの差別は、表面的に見えないよう、形を変えている。差別 の巧妙化が進んでいる、と いってもいいだろう。コカコーラ社の人種差別 訴訟は、その一例だ。同社は、黒人やマイノリティ向けのマーケテ ィングで、よいイメージを作り、人種差別 に取り組む優良企業の顔をしてきた。しかし、最近、従業員が起こした 訴訟で、実態が明らかになってきたのである。  

コカコーラ社の訴訟で、浮かび上がってきたのが、「ガラスの壁」の存在だ。この「壁」によって、マイノリテ ィ従業員が所属できる部署が、白人とは隔離され、昇進もこの中に限られている。そのうえ、マイノリティが積極 的に採用されるのは、人事や広報といった、公にでる機会の多い部署である。つまり、外向きにマイノリティを積 極的に活用しているように見せかけているのだ。  

これまでも、「ガラスの天井」ということばに象徴される差別があった。これは、皆と同じように働き、昇進し ているつもりでも、女性とマイノリティはある一定のレベルで見えない「天井」によって、昇進を遮られてしまう 例えである。女性とマイノリティに昇進をさせない、という取り決めがあるわけではない。問題を見えにくくさせ て、非難をかわしてきたのである。  

「ガラス」ということばは、見えないものの象徴である。雇用差別における「壁」も「天井」も目に見えない。 もちろん、こうした現象は、アメリカに限ったことではない。日本の女性が就職する時、総合職か一般 職か選択す る。昇進も「慣例が無い」などという理由で却下されたりする。形が違えども、「ガラスの壁」も「天井」も存在 しているのだ。

アメリカでは、企業内における女性の立場は高く、男性と同等である、というイメージがあるかもしれない。た しかに、様々な職種に女性が進出したり、役員登用される女性が増加するなど、全体的に見ると状況は改善されて いる。だが、企業の中にいる女性達からは、別の声が聞こえる。  

フロリダで全米で初めて女性重役会議が行われたのは、そうした現状を反映したものだ。会社の代表として、社 外の行事に参加しても、重役の妻と間違われるなど、重役クラスは、今も男性社会だ。表面 的には成功している女 性達も、様々な問題を抱えている。男性の企業社会の中で、ネットワークを広げることで、自らをエンパワーしよ うとしたのが、今回の女性重役会議である。  

女性は、企業の男性文化の中で生き残るために必死だった。しかし、今まで社会の中で1つ1つの点でしかなか った成功した女性達が、ネットワークを作ることで、他の女性もエンパワーされることであろう。サポートを求め るだけでなく、女性達自身で、更に質も向上できる素地ができたと考えられる。  

日本における女性重役の数は、アメリカと比較すると、極めて少ないであろう。女性同士が、自らの成功のため に、男性社会で足を引っ張り合っていてはならない。フロリダの会議のように、ネットワークを作り、女性の地位 向上のために協働する動きが日本でも生まれる日が来ることを、期待している。
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