今月の論評: 講和50周年で問われる日本の戦後補償
かしわぎ・ひろし
特集:問われる日本と日本企業
1. 日米講和記念の展示会に抗議行動
"Peace Treaty Exhibit Opens Amidst Protests"
Saturday, August 4, 2001, Nichi Bei Times
2. POWの訴訟に道開く法案、連邦議会へ
"Opening the Door for POW Lawsuits"
Thursday, August 9, 2001, Asian Week
3. 日産工場の組織化選挙、UAWが要求
"UAW Pushes for a Vote at Nissan Factory"
Wednesday, August 15, 2001, Wall Street Journal
4. トヨタ、多様化推進策に80億ドル投入へ
"Toyota Earmarks $8 Billion for Diversification Efforts"
Friday, August 10, 2001, New York Times
5. 日本の旅行社にホテルのボイコット要請、労組
"Jpn. Travel Agencies Asked to Boycott Marriott"
Saturday, August 18, 2001, Hokubei Mainichi
ニュース・ファイル
1. まちづくりNPO、市街地活性化に着手
"SF Group on a mission to revitalize blighted Sixth St."
Thursday, August 2, 2001, San Francisco Chronicle
2. 戻し税の寄付を要請、政府に抗議の意味込め
"Donating tax rebates as a protest"
Friday, August 3, 2001, San Francisco Chronicle
3. スウェットショップ反対で共闘組織、労働団体
"Labor Groups Form Anti-Sweatshop Coalition"
Wednesday, August 8, 2001, New York Times
4. 訪米のボーイスカウトと会談拒否、バークー市
"Worthington clarifies scout stance"
Friday, August 10, 2001, Berkeley Daily Planet
5. ブッシュ政権、AAPへの攻勢を延期
"Bush Delays Offensive Against Affirmative Action"
Monday, August 13, 2001, Wall Street Journal
6. 全米の不法滞在者、合計で850万人か
"Illegal Immigrants May Total 8.5 Million"
Tuesday, August 14, 2001, Wall Street Journal
7. 慈善の選択のトップ、辞任へ
"Head of Religion-Based Initiative Resigns"
Saturday, August 18, 2001, New York Times
8. 同性愛者の家庭、全米で60万世帯に
"Gay Couples Found to Head More Homes"
Tuesday, August 22, 2001, New York Times
9. ドイツ系への戦時収容に補償、連邦議会に法案
"German American Internment
Tuesday, August 23, 2001, Asian Week
10. マイノリティのメンタルケア、白人より不十分
"Disparities Seen In Mental Care For Minorities"
Monday, August 27, 2001, New York Times
今月の論評:
複雑な様相示す不法滞在者への恩赦
かしわぎ・ひろし
不法滞在の外国人に恩赦として永住権を与える大規模なプログラムが実施されたのは、1986年。恩赦と同時に、不法滞在者と承知で外国人を雇った雇用者を罰する制度が導入され、国境警備も強化された。これにより、不法滞在者が減少する、というのが当時の政府の主張であった。
しかし、連邦労働省の推定によれば、全米の不法滞在者の数は、現在400万人にのぼる。カリフォルニア州だけでも、100万人といわれている。不法滞在者ということばは、犯罪者のようなニュアンスを感じさせないわけでもない。だが、大半は、働いて、税金も納めている、健全な市民である。
最近、こうした不法滞在者に合法的な居住権を与える恩赦を実施しようという動きが広がってきた。きっかけのひとつは、労働界が恩赦反対から賛成に方針転換したことだ。従来、労働界は、外国人がアメリカ市民の仕事を奪うとして、恩赦をはじめとした寛大な移民政策に反対してきた。
だが、史上最長の好景気を背景に、人手不足が問題になっても、失業が話題になることは少ない。さらに、労働界では、移民労働者の組織化を重点政策に掲げ始めた。こうしたことから、恩赦を支持する姿勢を打ち出したのである。また、経済界や農場経営者からも支持が広がっている。
1986年の恩赦は、1982年から継続的に不法滞在している人々すべてを対象とした包括的なものだった。現在、議論されている恩赦は、同様に包括的なものから限定的なものまで幅広い。包括的な恩赦を求めていても、労働界のように、限定的なものから徐々に実施していく考えを認めているところもある。
部分的な恩赦のひとつ、合法移民家族公正法(LIFE)は、すでに実施されている。昨年12月に成立したLIFEは、1986年の恩赦の申請資格を基本的にもちながら、申請を却下されたり、申請を思い止まらされた人々を救済するものだ。このため、1982年以前に、アメリカに入国していたことなどが求められている。
LIFEの背景には、1980年代に起こされていた3つの訴訟がある。すなわち、ヒスパニック系の団体などは、1986年の恩赦にあたり、移民帰化局の実施方法に不備があったと指摘。恩赦を受けられなかった人々への救済を求めていたのである。LIFEの恩赦の対象者は、64万人にのぼるとみられる。
法律の適用を受けるには、2001年4月末までに移民帰化局に申請資格を伝えなければならないことになっていた。だが、多くの人々が期限内に申請を行えなかったとみられている。このため、連邦議会では、申請期限の延長を審議しているところだ。
もうひとつ検討されているものに、メキシコ出身の不法滞在者に限定した恩赦がある。ブッシュ政権とメキシコのフォックス大統領が、連携して進めているものだ。全米に300万人いるといわれるメキシコ出身の不法滞在者に、一時的な就労資格を認め、最終的には永住権を付与することがねらいだ。
メキシコ出身者に限定した恩赦は、米墨間の経済的関係全般にわたる協議の一部として提案されているものである。ブッシュ政権は、メキシコをアメリカの経済圏により強く組み込むことや、国内のヒスパニック系の票を期待している。だが、身内の共和党からも、保守派を中心に批判の声が強い。
このように、不法滞在への恩赦は、さまざまな政治的な思惑もあり、複雑な様相を示している。元々、不法滞在者の問題は、大きな経済格差や合法的な移民の制約などが背景にある。こうした問題を放置したままだからこそ、恩赦が小手先の療法に終わり、移民社会にも混乱をもたらしているのだ。