2005年秋(実施日10月6日〜21日)に実施された、サンフランシスコ・NPOボランティア体験プログラム参加者の感想です。プログラム実施中、参加者の方々に毎週提出していただいた「体験ジャーナル」より、参加者の声を以下にご紹介致します。
◆第1週目
森 真太郎さん
本日(10月14日)のセミナーで前半終了。言葉の面に大きな不安を抱えての参加だったが、コーディーネーターの方々、参加者のみんなに助けてもらって、何とかやっている。最大目標であるバークレイを訪れて、自分の肌で街の様子を伺うという目的が達成されたことに、大いに満足している。また、常に、自分の仕事(身体障害者の自立支援)とリンクさせながらのボランティア活動になっている訳だが、一番印象的だったのは、サンフランシスコ市カストロ地区での街路樹の植樹ボランティアと地域とのつながりである。勿論、活動の中で見たNPOと住民とのつながりは、ほんの一部にすぎないことは承知している。日本における地域貢献が、なかなか上手くいかない状況だが、この地域では「触れ合い」と「つながり」を十分に感じとれたので、日本でも、できる限りそういう方向にもっていけたらと思う。
横田 奈央子さん
ここに来て、すごいな、いいなと思うのは、ボランティアやNPOの活動する土台が、しっかりあるということ。1番最初のボランティア体験(街路樹の植樹)でも、「初めて参加したよ」と言うアメリカ人もいて、その人達はe-mailで連絡もらったり、直接ボランティアの方が家まで来て頼まれたりとか、樹を植えている最中でも、街行く人々が声をかけてくれたり、地元を大切にする精神が強いと思った。バークレイ・ウォーキングツアーでも、この街には企業の大きな店やチェーン店が実際少なく、街の人が、大手コーヒーチェーン店が地元に出店することに、出店反対の大騒ぎをしたとか、コミュニティの商売や人々・個性を大切にするという精神に共感する。私個人がまず出来ることは、社会的責任度の低い企業の物は買わないで、社会的責任に努力している会社やフェアートレードされている物を買うということで、買い物で意思表示することだなと強く思った。個人の犯罪は、メディアで大きく取り上げられるけど、企業は少ないと思うので、もっと、私達消費者は知っていくべきだと思った。
岡田 仁美さん
初めて、バークレイという土地に来て(アメリカ自体がそうなのかもしれないが)、よく人が声をかけてくれる。初めの頃は、駅やお店で困っていると、1日に何回も色々な人に声をかけてもらい、何度も助けられた。最初のボランティア体験として、街路樹の植樹をした。ボランティア同士はもちろん、作業中、通りすがる多くの人との会話があり、すごくいいムードで、皆さん楽しみながら作業している感じだった。次は、教会系NPOでホームレスの方に食事提供するボランティアだった。この作業をする中で、自分の持っているホームレスの方への意識が全く変った。日本で目立つのは、失業したあまり若くない人だが、アメリカでは、日本では殆ど見られない難民の人々も多く、その他ドラッグ依存症、精神的障害の方など、年齢層も様々だった。日本でも、そういう色々な問題を抱えている方も多いと思うが、ここに来て、実際作業しなければ、判らなかったし、自分の思い込んでいる世界しか見えていなかったと思った。その他、街の様子をウォーキングツアーという形で、ゆっくり見ていくと、目で見て、肌で感じとれる部分がすごく大きいので、次の週も、出来るだけ多くのことに気付いて、考えていきたい。
松尾 久美子さん
最初の週の前半は、セミナー受講と街路樹を植樹するボランティア体験をした。セミナーでは「アメリカのNPOとボランティア活動」について講演があり、全く知識を持っていない私にとって、NPOの活動の話しは、とても興味あるものに感じた。日本とアメリカの文化の違いによって、考え方も違い、考えさせられることが多かった。初めてのボランティア体験にも不安があった。しかし、実際やってみると、言葉は必要ないと思った。勿論、話せることがベストだと思うが、同じ作業を一緒にやり遂げると、心が通じあうことを感じた。
こちらに来て、早くも1週間が過ぎた。今週は3回のボランティア体験と、バークレイ・ウォーキングツアーをした。バークレイ・ウォーキングツアーは、とても勉強になった。街全体を住民と行政がつくり上げていて、昔の歴史や文化を損なわずに街をつくっていた。また、街の中に、NPOが多くあったことにも驚いた。そして、ボランティア体験は、どれも印象的だった。すべてのNPOに、それぞれの背景があり、深い意味をなすことばかりだ。自分が知らない世界を知ることが出来、毎日が考えさせられる日々だ。
今村 さゆりさん
NPOと住民が協力して街路樹の植樹をするボランティア体験を通して、言葉が通じなくても、作業を一緒にすることで、互いにコミュニケーションがとれて楽しくできた。バークレイ・ウォーキングツアーは、街にある数々のNPOを見て、同じように、日本の街をNPOの視点で見て歩いたら、きっと、たくさんの発見が出来るかなと思った。スープキッチンのボランティア体験を通して、目に映るホームレスや貧しい方々の姿に胸がいっぱいになると同時に、行政の不十分さや、アメリカ社会の根深い人種差別に強い怒りがこみ上げてきた。今回のプログラムでは、マイテーマを「積極的に何でも取り組もう」と自分に掲げて活動しているのだが、とにかく、労働作業と考えることが多く疲れる。でも、刺激的な毎日だ。
◆第2週目
森 真太郎さん
オークランドのFarmer’s Marketに行った。私は、アフリカ系コミュニティ支援団体NPOが行っている、資金収集の為の中古家具の寄付と販売の手伝いをした。これは特に今回のボランティアに限ったことではないが、それに携わる人達のモチベーションの高さに驚かされるばかりである。口で差別うんぬんを語るのは簡単だが、それを実行することこそ意義があり、重要なことだと改めて思った。Youth Centerでの子ども達との触れ合いは、おそらく私にとって忘れることのできないものになるに違いない。言葉が通じる、通じないは関係ない。それは多少の壁にはなるが、子ども達の「心」がその壁を取り払ってくれる。このセンターのボランティア・コーディネーターの方が言う通り、子どもは未来への希望であり光である。それを実感することが出来たことは、この上なく幸せな一日だった。彼らの今後の幸せを願うばかりだ。
横田 奈央子さん
アフリカ系コミュニティ支援団体の人達が、たくさんの富を持っている白人が黒人の人達に、その富を返そうとする活動は、全ては弱い立場にいる人の人権を守っていこうとする活動であって、一方に偏っている富は分配していかなくてはいけない。やっぱり、JPRNのコーディネーターやゲストスピーカーが言っていたように、世の中で、一番恩恵を受けている者が、犠牲を払うべきだと思う。先進国の途上国に対するExploitation(搾取)、多国籍企業のExploitation(搾取)も、私達はもっと知っていくべきだ。政治家の無責任な行動や発言にも腹が立つ。今、日本も、どんどん戦争をしていくような、してもいいような空気が広まりつつあって、とても恐ろしい状況だ。それでも、現首相の政党が圧勝した。 みんな無知のままに流されていく気がする。日本もアメリカのように(バークレイのように)地元の人々が協力して、Communityを、国を、自分達が守っていく活動を活発に出来たらいいなと思う。
岡田 仁美さん
アフリカ系コミュニティ支援団体NPOの資金調達の為のFarmer’s Marketや、フードバンクのボランティア体験を通して、私はFarmer’s Marketのように、何かを作り売るフリーマーケットのような資金集め、人と接するボランティアが自分に向いていると思った。フードバンクも多くの食料を提供していて素晴らしいが、自分が今している作業しか見えず、あまり遣り甲斐というものが感じられなかった。先週のスープキッチンは、じかに配膳される人と向き合うので、全く違うタイプの経験をできたのは良かった。Youth Centerで、子どもと関わるボランティアでは、様々な家庭環境にあるにも関わらず、明るく素直で好奇心旺盛な子供達の姿を見て、自分まで癒される気持ちになった。肌の色や少し言葉が違っても、同じ街で一緒に暮らしている姿を見て、素晴らしいと感じた。
今回のプログラム参加を通して、様々な全く違ったタイプのボランティアを体験する中で、知らなかったことを知るこができ、その結果、もっと知りたい、調べてみたいと思うことも増えたので、本当に視野が広がり、価値観も変ったと思う。これから、自分に出来ることを少しずつ探して、何事にも積極的に取り組んでいきたいと思う。
松尾 久美子さん
長いようで短い2週間のプログラムが終了した。途中体調を崩して、ボランティアに参加できないこともあったが、最後まで終了することができた。後半で一番印象に残ったのは、ドメスティック・バイオレンスについてのお話しだった。自分が身近に感じていない問題を取り上げているように思っていたが、話しの内容を聞くと、そうでもなかったりする。この問題がもつ背景には、今回のボランティア体験を通して知った、社会的に弱い立場にある人達がもつ背景と共通しているではないかと思った。
今村 さゆりさん
Farmer’s Marketのボランティア体験を通して、ボランティアスタッフのBillさんの献身的で、自然体で無理なく楽しんで取り組む姿に感動した。このNPOを支援している白人の方々が黒人の方々に向ける「謙虚な心」にも、深く感心した。私は、販売用のオムレツ作りを彼らに習い、後半には「料理の鉄人」とBillさんに呼ばれて、お役に立てて嬉しかった。ゲストスピーカーのドメスティック・バイオレンス(DV)についてのお話しでは、現在、日本でもDV法が施行されており、非常に難しい問題だと認識している。私の周囲にもDVを経験した方が少なからずいたので、この問題には、本当に切なく胸を締め付けられる思いがする。だから、このDVのNPOには、女性を含むマイノリティーの人々が、ひとすじの光明を見出す大きな存在意義があると強く思う。子どもと関わるボランティアでは、ボランティア・コーディネーターの方が語った「子供達は、つらい環境の中でも希望を持っている」との言葉を、心と体で実感した。私は、子ども達から希望をもらった。サポートする先生や若い人達から、子供に対する慈愛や、子供達の将来を期待してやまない姿に、清々しい感動を覚えた。
2週間のボランティア体験プログラムを通して学んだ事、心に残った事は、一晩では語り尽くせない。私のこれからの人生の中で、あらゆる角度から、大きく影響を与えることは想像に難くない。私は自己満足ではなく、「自己実現」の為に、自分に出来ることを活かして、社会貢献できたらと思う。
|