アメリカの在宅介護における被介護者による介護者教育マニュアル(2001年)
介護保険が導入されて、1年。自宅で介護を必要とする人々の多くは、従来の家族を中心とした介護から「他人による介護」に
移りましたた。ここで問題になることのひとつは、「他人による介護」に介護を受ける人がうまく適応できるかということで
す。特に、「遠慮が美徳」的な考えが根強い社会では、介護者にどう接したらいいのか迷うことも少なくないでしょう。
アメリカでは、こうした状況に対処するため、介護を受ける人が介護者にどのように対応すべきか、障害者や高齢者の自立生
活を推進する団体や人々が検討してきました。その成果を基礎に、アメリカにおける被介護者による介護者教育のあり方を紹介
することを目的に、財団法人太陽生命ひまわり厚生財団から助成金を受け、日本太平洋資料ネットワーク(JPRN)は、「アメリ
カの在宅介護における被介護者による介護者教育マニュアル」発行しました。
マニュアルは、在宅での介護と看護に焦点を当て、アメリカの制度に基づきつつも、普遍的な対応策を提示。被介護者による
介護者教育のマニュアルという性格上、主要な読者は、被介護者ですが、介護者や介護団体にも、参考になるように作成されて
います。介護は、被介護者と介護者の両輪で成り立つもので、介護を受ける側がなにを考え、どう振舞おうとしているのかを理
解することは、介護をする側にとっても有益である、という考えに立つからです。
制度的にみれば、アメリカの在宅介護は優れているとは到底いえません。しかし、フィロソフィー的には、重要な示唆を与え
ています。被介護者を受益者として受動的に捉えるのではなく、自立生活を進めようとしている能動的な存在であり、介護者を
雇用するという責任と権限をもった立場として位置付けられています。マニュアルは、このフィロソフィーを実現しようとして
いる人々の努力の成果を映し出したものです。