NPO戦略計画ハンドブック (2000年)
JPRNリサーチ・インターンの尽力により、「NPO戦略計画ハンドブック」が完成した。
このハンドブックは主に、組織の活動分野や規模にかかわらず、広くNPOに関わっている方たちや、特にリ
ーダーとしてNPOを率いている方たちを対象としている。より効率的にNPOを運営するための戦略計画の概
観、その具体的プロセスと計画手順についての解説にくわえて、ケース・スタディとして、実際にアメリカの
NPOで作成された戦略計画の実例も紹介している。まだ「戦略計画」という言葉に馴染みのない方にも、入門書
として最適の一冊。
*同時発売の姉妹書NPOマネジメント・マニュアルも、ぜひご覧ください。
目次の紹介
はじめに
第1章 戦略計画とは
第2章 戦略計画のプロセス
第3章 ケーススタディー
資料編
はじめに
「戦略計画」ということばをご存知だろうか。NPOが活動していく上で必要になってくる組
織の運営計画のことだ。戦略計画は、自分たちが組織の目的をはたすために、戦略的に組織の
取るべき最善の道を決定することに最大の特徴がある。 近年、日本でも環境や福祉、まちづくり、教育など様々な分野でNPO活動が盛んになり、次
第にNPOが社会ではたす役割も大きくなってきた。それにつれてNPOの社会的責任も大きくな
り、これまでのように善意と熱意だけによる活動では成り立たなくなってきている。社会の一
端を担うには、善意や熱意に加えて、事業の意図や成果を明確にした長期的ビジョンをもち、
さらに人事や財政を含め、組織的に安定した組織のマネジメントが重要になってくる。
戦略計画は、一時の感情や目先の問題に振りまわされることなく、組織が進むべき道を明確
にし、それを確実に掴むためのプランである。そして組織のチャンスを最大限に活用し、直面
する問題点を克服するために存在するものだ。 このハンドブックは、組織の業種や規模に関わらず、NPOに関わっている方々や、これから
リーダーとしてNPOを率いていく方々を対象とし、その人達に戦略計画の概念とその重要性を
紹介することを目的としている。より効率的で、目的を達成できる組織運営をする一助となれ
ば幸いである。 組織運営における戦略計画の概念は、まだ日本ではそれほど馴染みがない。このため、戦略
計画の実践書というよりは、入門書としての解説にした。1章では戦略計画の概観を説明し、2
章でその具体的なプロセスと簡単な計画手順を述べている。そして3章では過去に米国のNPOで
実際に立てた戦略計画をケース・スタディとして紹介し、戦略計画がどういうものかをより鮮
明に掴めるように努めた。 最後に本書の執筆にあたり、多くのアドバイスやご協力を頂いたJPRNの柏木宏事務局長、ス
タッフの野房あかねさん、インターンの伊東文江さん、岡本さだこさん、杉本有紀さん、藤田
弘子さん、村田涼子さんには心から感謝をしている。これらの方々のご協力なしには、この本
は完成しなかっただろう。
1999年11月
日本太平洋資料ネットワーク リサーチ・インターン
岩佐謙一
トップ
第1章 戦略計画とは
NPOの運営は、電話の応対の仕方から始まり、ファンドレイジング(資金調達)、ボランテ
ィア・マネジメントなど、様々なマネジメントを構成する要素がある。そのうちのひとつが戦
略計画だ。戦略計画は、NPOのマネジメントにどのような役割をはたし、組織にどのようなメ
リットをもたらすのだろうか。第1章ではまず戦略計画を定義し、これがどのようなもので、
なぜ重要なのか説明する。
第2章 戦略計画のプロセス
戦略計画のプロセスは、組織のミッションを追及するために、組織を取り巻く環境と組織の
正確な能力を把握し、この双方から組織の可能性を最大限に活かす手段を導き出す過程であ
る。組織の資源をどう社会のニーズや事業の機会・脅威と組み合わせるかを決定する過程であ
る、とも定義できる。
第3章 ケーススタディー
アメリカ合衆国カリフォルニア州に本拠地を置く、日本太平洋資料ネットワーク
(JapanPacific Resource Network、以下JPRN)は、1991年にコンサルタントを雇い、半年ほ
どかけて戦略計画を立てた。この章では、JPRNをケーススタディに、戦略計画の流れと現実的
に直面した問題点などに触れ、実際の戦略計画のイメージをつかむ。